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ヒトと持ち物の関係を見直す実験 - 映画『365日のシンプルライフ』雑感

監督本人が失恋をきっかけに自分の部屋に溢れかえった持ち物を見直す実験をする365日のドキュメンタリー風映画。
実験初日、トランクルームに預けているコートを取りに雪が積もったヘルシンキの町中を全裸疾走するところから始まる。

この実験のルールは、

  • 自分の持ちモノ全てを倉庫に預ける
  • 1日に1個だけ倉庫から持って来る
  • 1年間、続ける
  • 1年間、何も買わない


映画『365日のシンプルライフ』予告編(8/16公開) - YouTube

ストーリーに多少の起伏はあれど、基本的に365日の日常生活が淡々と描かれるドキュメンタリーなので退屈に感じる人もいるだろう。ライフハック()のテクニックやストーリーに起承転結を期待していると肩透かしをくらう。あくまでも実験映画だ。

断捨離とタイアップしているらしく、チケットを買った際に半券と一緒に著者の宣伝本やらWebサービスのチラシを貰って思わず苦笑してしまった。この映画を「断捨離」映画と称している人もいるが、自分には少し違和感を感じる。
断捨離は家に溜まったモノをどんどん「減らしていく」のに対して、この映画は家にあるものを空っぽにしてゼロの状態からモノを一つずつ「足していく」からだ。

この映画の隠れた見どころは本人が実験を通してモノを取捨選択する思考を身に付け、苦悩するところだと思う。
例えば、自分の指を歯ブラシやバターナイフの代わりにする。コートを寝袋代わりにする。二重窓を冷蔵庫代わりにする。1日1個しか持ち帰れないとなると今ある物で代用できないか必死に考えるからだ。ところが必要最低限のモノが揃い始めると今度は「もう欲しくない」とモノへの反抗が始まる。そのギャップが面白い。でも新しい彼女ができるとモノが増え始めるんだけどね。

意外だったのは、この実験はモノが無くて困るよりも周囲との人間関係で悩まされるようだ。携帯電話を持っておらず連絡手段が取れないことにより友人と喧嘩してしまう。それでもなんだかんだと主人公を支える弟や友人達がこの実験(映画)を続けられる要素となっている。

実験映画としては見応えがあったが、ただ残念だったのはエンドロールにトランクルームから彼が持ちだした365個のリストが流れるがフィンランド語なのでさっぱりわからんかった。自分としてはそこにすごく興味があったのに…。
(後で知ったが、パンフレットに英語で記載されているそうだ)

この実験をやってみたいかと言われると、日本でこの実験なんてできない。
何故なら全裸でトランクルームまでダッシュする時点でアウトだからだw

365日のシンプルライフ